トレンデレンブルグ徴候を改善する中殿筋の鍛え方の一考察
『トレンデレンブルグ徴候を改善するには中殿筋をどのように鍛えたら良いのか』という疑問に対して自分が簡単に調べて答えを出してみました。
基礎知識:筋の受動張力とは?
基礎知識として『筋紡錘が働く条件』を覚えておきましょう。
つまり、張力とは筋肉が物体(骨)を引っ張る力のことを指します。
次に、「受動」とは、「他から動作・作用を及ぼされること。受け身。」という意味です。
受動張力とは、筋を受動的に伸張した場合に、それに抗って働く力のことを指します。
- 左図:肘関節を屈曲位で保持した状態(conditioning flexed)から中間位へ移動した場合の(上腕二頭筋の)筋紡錘の発射頻度
- 右図:肘関節を伸展位で脱力した状態(conditioning extended)から中間位へ移動した場合の(上腕二頭筋の)筋紡錘の発射頻度
肘関節を受動的に伸張(伸展)した場合に、それに抗って(肘関節屈曲方向に)働くのは上腕二頭筋です。抗う力が強いほど筋紡錘の発射頻度が増えます。
- 左図:上腕二頭筋の受動的張力が高い状態。筋紡錘からの発射頻度は増加する。
- 右図:上腕二頭筋の受動的張力が低い状態。筋紡錘からの発射頻度は低下する。
トレンデレンブルグ徴候を改善する中殿筋の鍛え方とは?
以前の記事でトレンデレンブルグ徴候を改善するべく、中殿筋を効果的に鍛えるためには筋紡錘を鍛えようと話しました。
トレンデレンブルグ徴候については、以前の記事で紹介しています。
先ほどの受動張力の話に今回の話を当てはめてみましょう。
結果から言いますと、トレンデレンブルグ徴候を改善するには『中殿筋を遠心収縮にて強化する』ことも重要となります。
中殿筋の受動張力が保たれている条件で筋力強化を行えば良いのです。
つまり、側臥位で股関節外転位から中間位へ戻す運動を行うのです。
しかし、遠心性収縮だけではいけません。
結局、中殿筋を求心性で強化するのも必要になります。
中殿筋の前方筋腹は股関節屈曲、後方筋腹は股関節伸展に作用します。上記リンクにて詳細に載せています。
以下の文献では股関節伸展運動に伴い、歩行時の立脚期の前半にて中殿筋は求心性収縮をしていることが明らかになっています。
従来では、歩行時の中殿筋の作用として『立脚期には骨盤の水平位を保持するために、中殿筋は遠心性もしくは等尺性収縮をしている』と載っていますが、それだけでないことが以下の文献で示されています。
股関節伸展角度が増加する中,中殿筋が求心性収縮を行うことで,殿筋膜や停止腱は伸張され,筋膜や腱の弾性力が高くなり,効率的に股関節の安定性を高める歩行になっていることが考えられる。
つまり,中殿筋の筋力低下により生じるトレンデレンブルグ歩行の運動療法においては,中殿筋の求心性収縮を強調したトレーニングや股関節伸展角度を増加させたステップ課題の提示が重要になると考えられる。
今回のまとめです。
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