理学療法士が行うべき嚥下機能の評価
『嚥下』は言語聴覚士の分野ではなく、チームで関わっていくべき分野です。今回は、理学療法士が明日からでも嚥下機能に関わることができる評価を紹介しようと思います。
頸部の可動域
頸部の可動域は咀嚼機能・嚥下運動・摂食時の姿勢・呼吸のコントロールに影響を及ぼします。臥床が続き、頸部の筋緊張が亢進していたり、頸部の筋肉が拘縮している患者様は少なくありません。
頸部の可動域は自動運動と他動運動の2種類をきちんと評価しましょう。
ただし、以下の場合では評価が困難となります。何が原因で困難となるかは把握しときましょうね。
2.意識障害や筋力低下で頸部の抗重力活動が困難な場合
3.頸部椎間板ヘルニアや頸部脊柱管狭窄症で、頸部を動かすことで痺れの増強を認める場合
4.頸椎固定術後に無理な他動運動を行うこと
頸部の屈曲(前屈)・伸展(後屈)
矢状面から腰かけ座位で測定を行います。参考可動域は屈曲(前屈)で60°、伸展(後屈)で50°です。
移動軸:外耳孔(耳の穴)と頭頂を結ぶ線
頸部の回旋
矢状面から腰かけ座位で測定を行います。参考可動域は左右とも60°です。
移動軸:鼻梁と後頭結節を結ぶ線
頸部の側屈
前額面上で背面から腰かけ座位で測定します。参考可動域は50°です。
移動軸:頭頂と第7頸椎棘突起を結ぶ線
体幹機能
体幹の機能は、摂食時の姿勢・摂食時間・嚥下時の呼吸コントロールなどに影響します。側弯(特に、胸椎部分)では、呼吸機能、食塊の食道通過に影響を及ぼします。
座位姿勢
座位姿勢の状態は主に3つに分けられます。
2.リクライニング座位⇒リクライニング角度、ティルト角度を把握しときましょう。
3.普通型車いすまたは椅子座位
以上の赤文字の言葉の意味が分からない方は以下のリンクで詳しく説明しています。

また、座位姿勢の観察ポイントは以下のリンクで解説しています。ご参考下さい。

座位耐久性
耐久性は、その時間を通してバイタルが安定しているか、意識状態(JCSで評価)、本人の自覚的な疲労度(Borgスケールで評価)などで行いましょう。
約1時間座ることができれば十分です。それ以下の場合は5分刻みで評価しましょう。
ただ、「座位の耐久性が30分あるから、その人は30分食事を行える!」というわけではありません。「食事」という活動を行いながら座位姿勢を保つことができるほどの耐久性が必要です。
だから、上記の耐久性を「安静時」で行っているのか、「動作を伴っている」のかで分けて評価するのが好ましいです。
座位バランス
座位バランスはHoffer座位能力分類(JSSC版)で評価します。足が床に着く高さで、しっかりした座面上(理学療法や作業療法で使用するプラットホームなど)に端座位で座った状態を評価します。また、脊髄損傷者は現時点では対象外としています。
座位姿勢2:身体を支えるために、両手または片手で座面を支持して、30秒間座位保持可能な状態
座位姿勢3:両手または片手で座面を支持しても、座位姿勢を保持できず、倒れていく状態
評価ポイントは以下の通りです。引用サイトはこちら。
2.対象者の状況のみで評価し、介助者の有無や周辺環境の様子は考慮しない。
3.左右は前額面から、前後は矢状面から安定性を評価する。
4.日内変動や短期間で変動があるときは、低いほうの評価を採用する。
5. 日常生活における座位の実用性は考慮しない。
6.認知機能(精神面)は考慮しない。
7.車いす、姿勢保持装置との関係は考慮しない。
8.ベッド柵や手すりの使用はしない。
9.支持性の無い上肢(片麻痺など)は無理に挙上する必要はない.それが支持に用いられているか否かは検者が判断する。
握力
握力はサルコペニアの診断にも使用されています。上肢の筋力だけでなく、下肢の筋力や体幹の筋力とも相関性を示しています。つまり握力は総合的な筋力の指標となります。
握力計の指針が外側を向くようにして、上肢は体側に下垂して直立(立位)で行います。立位姿勢が困難な場合は座位で測定します。その場合は評価表に「座位で測定」と記載しましょう。
握りは示指のPIP関節がほぼ直角になるように調節しましょう。
高齢者における握力の基準値を以下に示しておきます。
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