食事介助のポイントを解説!
食事の環境調整の2回目です。1回目は、環境アプローチの基本事項と、食事の自力摂取についての環境調整について話しました。
今回は食事の介助摂取についてお話していこうと思います。前回の内容については以下をご参照ください。
介助摂取はどのような姿勢が良いのか
注意点として、歩行が可能なレベルでも「最重度」の嚥下障害がある場合には完全側臥位をとって下さい。
介助摂取の食事姿勢と介助の方法(座位)
まず、上の図の「椅子座位または車いす座位」の場合の介助摂取の食事姿勢と介助の方法についてです。
姿勢
ポイントは以下の2つです。
2.円背のある方は椅子を補整する
食事姿勢は機能的座位でも安楽座位でも良い
介助摂取の場合でも姿勢はどちらでも構いません。また、必ずしも無理に骨盤を立てなくても良いです。
リラックスした姿勢を心がけてください。無理に骨盤を立てることで姿勢保持によって疲労が起きてしまいます。
円背の場合には椅子を補整する
円背の補整方法については過去記事にまとめていますので、チェックしてみて下さい。
食具の使い方と介助の準備
ポイントは以下の4つです。
1.介助用のスプーンを使用する
2.スプーンは軽く持つ
3.患者の顎が上がらないように介助者も座位をとる
4.介助者が座位をとれない場合にも顎が上がらないようにする
介助用のスプーンを使用する
介助用のスプーンは自食用よりも浅い作りになっています。
大きいスプーンだと、口に入らず食べこぼしやすくなります。
うまく食べれないとすすってご飯を食べようとします。これは誤嚥に繋がってしまいます。
また、自食用スプーンだと一口量が多くなり窒息を引き起こすリスクがあります。
スプーンは軽く持つ
軽く把持することでスプーンを通して患者の口唇圧を感じることができます。
患者の顎が上がらないように介助者も座位をとる
よく立ったまま食事介助をする方を見かけますがNG行動です!
介助者が立っていると、介助スプーンも上から患者様の口へ運ぶ形になります。
患者様の顎が挙がることで、嚥下時の頭頚部の基本である「顎から胸骨までの距離が指4本分」の頭頚部屈曲位から逸脱してしまいます。
基本の食事介助方法
ポイントは以下の5つです。
1.一口量はティースプーン一杯が基準
2.スプーンは正中から入れる
3.閉口したらスプーンが歯にぶつからないように上方向に引き抜く
4.開口しない場合、上唇に食材を触れさせてみる
臨床で良く見かけるNG行為があります!
本来の食事動作に即すことで嚥下反射が誘発されます。
気を付けるべき患者の反応
食事介助を行っている際に患者の反応もしっかり観察しましょう。
引用:佐藤彰紘:「その介助法で本当に大丈夫?」OTが知っておくべき一般的介助技術,OTジャーナル(三輪書店),Vol52(11)p1160-1164,2018より一部改変引用
1.患者の口にスプーンが近づくと、頭頚部は伸展位となりやすい
2.口唇を閉じない方法で食事を取り込み続けると、口が閉じられなくなる
3.「吸う」食べ方は空気を吸い込むため、誤嚥のリスクが高くなる
「吸う」方法で食事をしている様子が観察されるのは横径の大きいスプーンを使った場合によく見られます。
介助摂取の食事姿勢と介助の方法(リクライニング位)
次に、上のフローチャートにある「リクライニング位」の場合での介助摂取の食事姿勢と介助方法について話していきます。
介助摂取では、あくまでも「食べやすさ」ではなく「誤嚥を防ぐ」ことに重きを置いています。リクライング位は誤嚥を防ぐために適した姿勢なのです。
リクライニング位の利点についてまとめる前に、嚥下の仕組みについて、良いgif画像があったので引用させて頂きます。
下の画像の水色が食べ物ですね。そして、食道は気管より後ろにあるのが分かります。
引用:摂食嚥下障害|丹後ふるさと病院
リクライニング位(下の図)は、喉頭が真上に上がらないといけないので飲み込みにくいですが、食塊は重力によって下方向すなわち食道へ入りやすくなり、誤嚥しにくくなります。
円背の人(下の図)は食塊の咽頭への移送の際に重力に逆らって食塊を運ぶ必要があります。
舌の筋力が低下した方では、それができずに、口腔内に残渣(ざんさ:食物のかす)が残り、誤嚥を起こすことがあります。
このような場合にもリクライニング位をとることで、食塊の移送を容易にできます。
リクライニングベッドの調整
リクライニングベッドの調整のポイントは以下の4つです。
1.基本を忠実に守る
2.背上げ軸と股関節を合わせてずり落ちに注意
3.肩は隙間を埋める程度にする(無理に背中までタオルを敷き詰めないで下さい。)
4.前腕部分は床と平行になるように枕等で高さを調整する
基本を忠実に守る
基本は前回の記事で紹介しました。
背上げ軸と股関節を合わせてずり落ちに注意
背上げ軸とは、ベッドをギャッジアップしたときの支点となる部分です。(下図参照)
PARAMOUNT BED 背上げの研究 一部改変引用
ずり落ちについては後程詳しく解説していきます。
肩は隙間を埋める程度にする
有名なポジショニング方法です。有名がゆえに「とりあえずタオルで隙間を埋めとけ!」と言わんばかりにタオルを詰め込まれている患者様を目にします。
埋め込みすぎは逆に患者様の動きを制限してしまうので注意です。
前腕部分は床と平行になるように枕等で高さを調整する
ベッド上でご飯を食べようがテーブルでご飯を食べようが上肢は安定させておくのが基本です。
頭頚部屈曲位保持のコツ
リクライニング位で頭頚部を屈曲位に保持するためのポイントは以下の3つです。

頭頚部屈曲位のコツ(クリックして拡大)
2.ポジショニングは外後頭隆起(頭の後ろで一番出っ張っている部分)を押すイメージで行う
3.首の下をタオル等埋めて押しすぎると頸部は伸展方向になるため注意!
食具の使い方と介助の準備
ポイントは以下の3つです。
2.小さい開口で容易に入る一口量を提供する
3.リクライニング位の患者様に「もっと口を開けてください!」は禁句
その他の注意点は基本の介助方法と同じです。
ずり落ちを見抜き、防止する
見抜く
良いリクライニング位は股関節がしっかりと「くの字」に曲がります。悪いポジショニングは股関節から体幹が弧を描きます。
悪いリクライニング位は呼吸症状を悪化させるとともに腹圧を上昇させ、胃食道逆流の要因になります。
ずり落ちを防止する
リクライニング前のベッドと身体の位置調整がポイントとなります。先ほど話したように、ベッドの背上げ軸と股関節の位置を合わせます。
大腿がベッドから浮いてくる場合には、大腿の下にタオル等を入れましょう。
車いす上のずり落ちを防止する
ずり落ちはリクライニングベッドだけでなく、車いすのリクライニング時にも起こり得ます。
車いすのリクライニング機能だけで角度を調整すると、ほとんどの方は次第にずり落ちてきます。
これはNG行為です。リクライニング時の身体は力学的に前方へ滑り出してしまいます。この前方への滑り出しを無理矢理に止めてしまうと、褥瘡のリスクを高めてしまいます。
これを防ぐため、リクライニング機能とティルト機能を併用しましょう。
リクライニングとティルトについての用語の解説は以下のリンク先で解説をしています。基本的な用語ですが間違えやすいポイントなので抑えておきましょう!
おわりに
ぜひ今回の内容を覚えて頂き、臨床で活かしてほしいと思います。チームで協力して嚥下の機能や能力を底上げしていって欲しいです。
次回は理学療法らしく、姿勢と嚥下の関係や姿勢の分析について話しをしていこうと思います。最後まで読んで頂きありがとうございます。お疲れさまでした。
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