大殿筋
起始停止
大殿筋は起始・停止の違いにより「浅部線維」と「深部線維」に分けられます。
浅部線維
起始:腸骨稜-上後腸骨棘-腰背腱膜-仙骨-鼻骨
停止:腸脛靭帯
深部線維
起始:腸骨外面で後殿筋線の後方-仙結節靭帯-中殿筋の筋膜
停止:大腿骨殿筋粗面
神経支配
下殿神経(L5~S2)
血液供給
上殿動脈および下殿動脈
働き
機能上の違いにより「上部線維」と「下部線維」に分けられます。
共通する動きは「股関節の伸展」と「股関節の外旋」です。
「股関節伸展」はハムストリングスと協同して働きます。動きを順番に動きを見ていきましょう。
また、これに加えて「上部線維」では「股関節の外転」作用、「下部線維」では「股関節の内転」作用があることを覚えておきましょう。
大殿筋の働き
上部線維:股関節の伸展・外転・外旋(荷重応答期~立脚中期で最も働きます。)
下部線維:股関節の伸展・内転・外旋(踵接地で最も働きます。)
触診
被検者を腹臥位にします。触診したい側の膝関節を90°屈曲させます。
先ほども書きましたが、股関節伸展はハムストリングスと協同して働きます。
膝関節を屈曲させることでハムストリングスが緩みます。
この状態で太ももを持ち上げるように指示します。
触診は以下の2点です。ハムストリングスが働いていないかを確認しながら大殿筋の収縮を触診しましょう。
また、骨盤の前傾による代償が生じる可能性もあるので、検者のもう片方の手で骨盤を押さえましょう。
上部線維の触診
検者は股関節軽度伸展・内転位で保持した状態(下左図)から股関節の外転運動を反復させます。
触診部位は上後腸骨棘から腸骨稜に移行する部分です。
下部線維の触診
検者は股関節軽度伸展・外転位で保持した状態(下左図)から股関節の内転運動を反復させます。
触診部位は殿溝の直上から少し内側の部分です。
大殿筋の拘縮テスト
股関節を開排位(下左図)にした状態から股関節を内転させましょう。
膝が恥骨を通る床との垂直線を越えれるほど内転できるかで判断します。
大殿筋の拘縮がある場合は、膝が恥骨を通る床との垂直線を越えることができません。
また、股関節を内転するときに股関節内旋が加わらないように気をつけましょう(下右図)。
大殿筋歩行とは
正常歩行の踵接地の時には以下の図の黄色の矢印の方向に床反力を受けます。
床反力は、股関節の前方を通ります。
つまり、股関節の屈曲モーメントが働くということです。
この際に慣性が生じます。
慣性によって股関節や体幹は屈曲方向に曲がります。
ただ、正常の場合は大殿筋が働き、伸展モーメントを生じさせます。
慣性による屈曲モーメントと大殿筋による伸展モーメントが釣り合うことで、股関節や体幹の屈曲を押さえてくれます。
つまり、歩行が安定しスムーズな前方移動となります。
大殿筋が弱化したり、麻痺したりすることで大殿筋歩行(上右図)のように慣性による屈曲モーメントに大殿筋による伸展モーメントが負けてしまいます。
すると、体幹は前方へ倒れてしまいます。これでは前方への転倒リスクが高くなってしまいます。
そうならないために上右図のように体幹を後方へ倒すことで、靭帯性に股関節を安定させて歩くのです。(代償的な歩き方になるということです。)
このことを大殿筋歩行といいます。
靭帯性に安定させたいならば股関節伸展位が好ましいです。
股関節の靭帯は股関節屈曲位で全て緩んでしまいます。
これを回避するために、できるだけ股関節を伸展方向に持っていきたいのです。
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