股関節内側骨折の分類と術式の紹介

臨床ですぐに使える基礎知識
この記事は約7分で読めます。

股関節内側骨折の分類と術式の紹介

スポンサーリンク

大腿骨近位部骨折の分類

大腿骨近位部骨折の分類

大腿骨近位部骨折の分類

大腿骨の近位部の骨折の分類は大きく分けて5種類あります。

ここでのポイントは『骨折の部位によって骨の癒合が早いかどうか』です。

 

関節包の外側(上記図のdとe)は血流が豊富で、骨癒合しやすい
関節包の内側(上記図のaとb)は血流が乏しく骨癒合しにくい
頸基部骨折の場合、骨折線は関節包の内外にまたがっていることが多いです。

大腿骨内側骨折で知っておくべきポイント

大腿骨内側骨折の基礎知識として以下の3つを順番に解説していきます。

 

1.大腿骨頸部内側骨折の分類
2.術式の選択方法(接合術と置換術)
3.進入路について

大腿骨頸部内側骨折の分類

内側骨折(Gardenの分類)

Garden分類

大腿骨頸部内側骨折の分類では『Garden分類』が用いられます。

 

非転位型(Ⅰ・Ⅱ)では骨癒合率がきわめて高い骨癒合率は85〜100%)ため、骨接合術が推奨されます。

 

一方、転移型は非転位型に比べて骨癒合率が低く(骨癒合率はstage IIIで50〜97%、stage IVで89%)、骨頭壊死や遅発性骨頭陥没(late segmental collapse;LSC)のリスクが高いです。

 

そうなってしまうと再手術が必要になります。

転移型の症例に対して骨接合術を行った場合、再手術の確率が高くなってしまいます

そのため、一般的には人工物置換術が施行されます

 

stageⅠ・Ⅱ:ハンソンピン・CCHS(cannulated cancellous hip screws)
stageⅢ・Ⅳ:人工骨頭置換術(BHA)・人工関節全置換術(THA)
ハンソンピン(商品名)やCCHSは接合術、BHAやTHAは置換術に分類されます。

術式の選択方法

上記のポイントは教科書的な考えです。

臨床では骨折の転移の程度に関わらず(Garden分類に拘らず)、年齢や全身状態や活動性を考慮して術式が選択されます。

 

完全な除痛を希望する場合:BHA・THA
年齢が比較的若い場合:THA
変形性膝関節症合併:THA

接合術

接合術の特徴について紹介します。

手術時の侵襲が少ない
早期の全荷重(FWB)が困難
偽関節や大腿骨頭壊死のリスクが高い

手術時の侵襲が少ない

術後の疼痛や筋力低下の早期改善、感染のリスクを減らすことができます。

早期の全荷重が困難

骨密度が低下している症例では固定が十分に得られず、置換術に比べて免荷期間を設ける場合があります。

偽関節や大腿骨頭壊死のリスクが高い

骨接合術はあくまでも折れた骨を繋ぎ合わせるものです。

その後は自身の治癒能力で回復していかなければなりません

この治癒能力が少ない場合は、偽関節壊死を起こしてしまう可能性があります。

解剖学的に骨癒合が悪い関節内骨折ならなおさらです。

偽関節とは受傷後6ヶ月以上たっても治癒しない骨折のこと。骨折が生じると治癒機転(修復)が始まるが、年齢、骨折の状態や全身状態などにより治癒が遅れ、治癒機転が停止する場合がある。
そのため、癒合できなかった骨同士の間が関節のように動くことから偽関節と呼ばれる。

置換術

置換術の特徴について紹介します。

術後すぐに全荷重が可能
偽関節や骨頭壊死などの合併症がない
関節の脱臼リスクがある
手術侵襲が骨接合術と比較して大きい
人工骨頭の長期の使用により、ゆるみが生じる可能性がある

術後すぐに全荷重が可能

『セメント非使用THAで早期荷重を行うことは、深部静脈血栓症の発生頻度を下げ入院期間を短縮させることができ有用である。(Grade B)』とされています。

偽関節や骨頭壊死などの合併症がない

関節や骨頭を人工物に『置換』するため、これらの合併症は起こりません。

骨癒合の能力は年齢が高くなるにつれて低くなってきます

高齢者の大腿骨頸部内側骨折では、これらのリスクを回避するために置換術が好まれています。

関節の脱臼リスクがある

手術のアプローチ法によって脱臼リスクのある姿勢や割合が変わってきます

アプローチ方法は後述します。脱臼の割合については以下の統計を参考にしてみてください。(Clin. Orthop. 393,168-180,2001)

  • 後方切開の脱臼率:3~6.5%
  • 前方切開の脱臼率:0.4%以下(側方展開)

術直後~術後8週間では術部軟部組織や筋力が弱く脱臼の頻度が高いと言われており、脱臼された方の約85%が術後8週以内であると報告されています。

 

また、脱臼のある姿勢は以下に示します。

前方アプローチでの脱臼肢位:股関節伸展・内転・内旋の複合運動
後方アプローチでの脱臼肢位:股関節屈曲・外転・外旋の複合運動

日常生活では後方アプローチでの脱臼肢位の姿勢を取ることが多いです。(正座を崩したときにする横座りやしゃがみ込み)

手術侵襲が骨接合術と比較して大きい

アプローチ法によって切離または温存する部分が変わってきます。

侵襲(メスを入れる部位)として後方関節包や外旋筋群などの切離が必要とされます。

 

手術侵襲によって疼痛や筋力低下、可動域制限などの問題が生じます。(これらを防ぐためにリハビリが必要なわけです。)

人工骨頭の長期の使用により、ゆるみが生じる可能性がある

人工物はいつか老朽します。

老朽することで擦れたりゆるみが生じ、脱臼のリスクが高まります。

一般的に人工関節の耐久年数は15年~20年といわれています。

 

できる限り人工関節の老朽化を防ぐ必要があります。患者様に対しては以下のような指導をしましょう。

適正な体重を維持する。
健康状態活動性を維持する。
・自宅内の環境調整や杖などを使い、転倒を防ぐ
・手術を受けた部位を急に動かすような負荷を加える運動は控える
・物を持ち上げる動作を繰り返して行わない。
・重い物を持ち上げたり、押したりしないようにする。

BHA・THAの進入路について

外方アプローチ(Dell法/Haring法)

  1. 中殿筋中央を線維方向へ裂いて展開します。
  2. 大転子前方を骨切りします。

メリット/デメリットを紹介します。

・術中の視野が広くインプラント設置が容易であること。
・骨片の骨癒合が得られれば中殿筋の確実な再建が得られること。
・移動骨片の骨癒合が得られない場合でも中殿筋後方線維により、中殿筋の著明な筋力低下をきたさないこと。
・骨切りするため早期の外転運動片脚立位が禁忌
・移動骨片の骨癒合が得られない場合には入院期間が長くなることである
・骨片の再固定に使用した縫合材料が切れることにより大転子部位が骨折する可能性がある。

外方アプローチ(Charniey法)

  1. 中殿筋(大腿骨近位部後面)と大殿筋の間を手で剥離します。
  2. 大腿筋膜と中殿筋前縁間を指で剥離します。
  3. 外側広筋を切開します。
  4. 大転子を骨切りします。

後・後外方アプローチ(Gibson法、Harris法)

  1. 大腿筋膜張筋を切離、大殿筋と中殿筋間から侵入
  2. 大殿筋腱部、短外旋筋群を切離
腱部・短外旋筋群を切離・展開をするため、術後の筋力低下が起こります。だからといって、術後直ぐに高負荷のトレーニングを行うことは筋・骨の癒合不全を招いてしまうので注意が必要です。
後方アプローチと後外方アプローチの違いは中殿筋を切離するかどうかです。
・後方アプローチ:中殿筋を温存
・後外方アプローチ:中殿筋を切開

ただ、後方アプローチでは皮切部分が真後ろにあり、術後直ぐは座った時に術創部が痛む可能性があるため、『単純に筋力低下を抑えたいから後方アプローチを選択する』のは間違っていますね。

前方アプローチ(DAA)

ここ最近で一番使われている術法です。

様々な研究により、他アプローチとの比較で『筋の低侵襲性』、『歩行能力の早期回復』、『カップの正確な設置』、『低い脱臼率』のエビデンスを得ています。

DAAは筋・腱を温存した状態で人工関節(骨頭)を設置できる。
また、後療法を早めても筋や骨の癒合不全のリスクがない

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました