歩くことの大切さ。

介護予防
この記事は約9分で読めます。

「歩く」ことの大切さ。

 

私は回復期の病院に勤めています。

患者様をお家に帰し、病気になる前のような生き生きとした生活に戻すために患者様と一緒にリハビリを頑張っています。

そんな中である患者様からの一言に対して私は『適切な返答』を伝えることができませんでした。

わたしね。運動が嫌いなの。やらなきゃって思うけど…。こんな状態で家に帰って大丈夫かな?

そうなんですか。今、一生懸命頑張っているから大丈夫ですよ!

なんて無責任なことは言えないです。

頑張らなきゃいけないのは退院後です!退院は通過地点に過ぎません

かといって運動が嫌いな方に自主トレーニングを提案しても継続してくれるか分からないです。

 

「患者教育」の知識として、少しでも説得力を上げるために、運動に関する具体的なアドバイスをできるように簡単に勉強してみました。

スポンサーリンク

運動が全身にもたらす効果

みなさんはテレビや雑誌等で頻繁に取り上げられている『運動』に対してどんなイメージをお持ちですか?

 

体力をつけるため、筋肉をつけるため、痩せるため…。もちろんそのような効果もあります。

実は運動には以下のような様々な効果があります。

  • 動脈硬化性の病気、特に心筋梗塞の危険性を減少
  • 体脂肪を減らし体重のコントロールに有効
  • 脂質異常症(低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症)の予防・改善に有効
  • 高血圧の予防・改善に有効
  • 糖尿病やメタボリックシンドロームの予防・改善に有効
  • 骨粗鬆症による骨折の危険性を減少
  • 筋力を増し、色々な身体活動の予備力が向上
  • 筋力とバランス力を増やし、転倒の危険性を減少
  • 乳がんと結腸がんの危険性を減少
  • 認知症の予防・改善に有効
  • 睡眠障害の改善
  • ストレスの解消、うつ病の予防・改善に有効
  • シェイプアップし、自己イメージが改善家族や友人と身体活動の時間を共有
  • 良い生活習慣が身につき、悪い生活習慣を止めるのに有効
  • 老化の進行を防ぎ、QOL(生活の質)の改善に有効

引用:疾病予防および健康に対する 身体活動・運動の効用と実効性に影響する要因

メリットしかないですね。

 

じゃあ「すぐにみんな運動をしよう!」というわけにはいきません。後述するのですが、運動を継続することが難しいというのが最大の難所です。

データから見る身体活動量の現状

運動は身体に色々な効果を与えてくれることが分かりました。

この項では運動量と死亡率の関係・「健康を維持できる」ために必要な1日の運動量についてのデータを示していこうと思います。

死亡率と身体活動量

身体活動量が多い者や、運動をよく行っている者は、総死亡、虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、結腸がんなどの罹患率や死亡率が低いこと、また、身体活動や運動が、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことが認められている。更に高齢者においても歩行など日常生活における身体活動が、寝たきりや死亡を減少させる効果のあることが示されている。

引用:身体活動・運動|厚生労働省

 

上記の引用を返せば、身体活動が低い人は死亡率が高いとされています。

平成25年の厚生労働副大臣の会見では、日本では運動不足による死亡者数は、喫煙、高血圧に次ぐ第3位でその数は年間約5万人であるということが発表されています。

1日に何歩歩けばいいの?

スポーツやジムに通うなどの運動は費用や時間もかかるので敷居が高いです。

私がオススメする最適な運動は「歩く」それだけです。歩数の目標値を赤字で以下に示します。

日常生活における歩数の増加

目標値:男性6,700歩、女性5,900歩
注)1日当たり平均歩数で1,300歩、歩行時間で15分、歩行距離で650~800m程度の増加に相当
基準値:男性 5,436歩、女性 4,604歩 (70歳以上)

(平成9年国民栄養調査)

目標値には男女ともに1000歩ほど届いていないですね。

上記の値はあくまでも「日常生活における」歩数です。

 

つまり、日常生活の歩数では健康を維持できないということになります。

残りの1000歩は意図的に追加で歩行しなければなりません。追加と言っても15分ほどの散歩で事足ります。

 

運動習慣をつけることができるかが勝負

少し前のデータになるのですが、運動の習慣がある人は4人に1人というデータがあります。

運動習慣者の増加

目標値:男性39%、女性35%
基準値:男性28.6%、女性24.6%
注)運動習慣者:1回30分以上の運動を、週2回以上実施し、1年以上持続している人

(平成9年国民栄養調査)

あまりにも少ない…。

若い間は運動の習慣がなくても否が応でも「歩行」という運動を活発に行っているのでその時はそんなに影響はありません。

 

影響があるのは『運動の習慣がない若い方々』が高齢化してくる頃です。

 

運動の習慣を持たずに高齢になると機能はガクッと落ちていきます。

65歳以上では年に1%ずつ筋力が落ちてきます。

そのまま生活していると日常生活にも影響を及ぼすほどに身体の機能が衰えてきます。

 

何らかの疾患を患い、入院して退院に向けてリハビリをしているならば運動習慣を身に着けて退院」して欲しいものです。

 

患者様によくお話をするのですが、退院がゴールではないのです。このことは医療職の方々にも覚えていて欲しいです。

 

退院=元の状態に戻った」わけではありません。

なんとか生活に戻れるレベルです。

 

退院した後も運動を続けないといけません。

運動の習慣がつかないまま退院した方は、私が思うに退院時が「機能のピーク」だと思います。

 

私は1時間(3単位)のリハビリのうち、最初の20分(1単位)は毎日同じ訓練を行っています。

同じ場所で同じ回数を行います。しつこいぐらいに毎日同じ訓練を繰り返します。

 

退院が近くなってくると患者様から「またこれでしょ?次はこれだよね!」と自主的に行ってくれます。

こうなったら退院後にも習慣して練習をしてくれる割合が増えてくると思います。(自身の体験談です。)

 

運動に消極的な方も多くはいると思います。

 

たまに「自分の身体のことなのに自分で面倒見れなくてどうするんだ!」と憤ることもありますが、その一方で70年・80年生きてきて家庭や仕事で酷使してきた身体をさらに酷使してリハビリするのは相当な忍耐と努力が必要であると思うとしょうがないのかな…とも思います。

 

外出について積極的な態度をもつ者の増加

日常生活の中で買物や散歩などを含めた外出について、「自分から積極的に外出する方である」とする者
目標値:男性 70%、 女性 70%(60歳以上) うち、80歳以上の全体 56%
基準値:男性 59.8%、女性 59.4%(60歳以上) うち、80歳以上の全体 46.3%

(平成11年「高齢者の日常生活に関する意識調査」(総務庁))

実をいうと80歳以上の方の半分が外出に消極的なんですね…。

 

運動に消極的な方々はだれかの助けを借りながら運動をしていくほかないと思います。

例えばリハビリ特化型のデイサービスに行くとか、ヘルパーさんの付き添いで歩いて買い物に行くとか…。

「運動に対する意欲の低下」にどう向き合うか。

冒頭でも言いましたが、これは今の私には難しすぎる問題なのです。

 

本人が「やりたくない。運動したくない。歩きたくない。」なら無理に身体を動かせたくないです。自由意志です。自分だったら嫌ですもの。

 

体調が優れないときに「運動しましょう」なんて言われたら拒否したくなります

 

ただ、運動をしなくなり、身体が衰え、自宅内までも安全に歩くことができなくなるまでに機能が落ちてしまうと待っているのは24時間天井を見つめるだけの「寝たきり生活」です。

 

そこには楽しみもほとんどない(楽しみと言えばテレビ・ラジオくらいでしょうか。)『生きているだけの』生活が待っています。

そんな思いを患者様に極力させたくないのは仕事柄に思うことです。

 

こういったジレンマに今でも苛まれています。

 

「寝たきりになっている人」のほとんどは今までは何の苦労もせずに歩いてきた方々です。

何かを目的に歩いてきたのです。仕事の通勤のために歩く、犬の散歩をしたい、温泉に行きたいとか…

「健康になるために」歩くということは、健康に興味関心のない人(大部分がそうだと思います。)にとってはです。

達成感を味わうことができないのです。

体力や脚の力なんてものは日常生活では可視化できるものではありませんし、即時的な効果も表れにくい。

 

そして何よりも、どんな年齢の人間にとっても「歩行」は目的ではなく手段だと思います。

何かを目標に「歩行」する

・運動は自分なりの目標が必要不可欠
・目標は他人と共有しましょう

なにか目標をもって運動に繋げていって欲しいです。

 

まずは些細なことでもいいと思います。マンションに住んでいるなら「エレベーターを使ってゴミ出しに行く」とか、「近くのコンビニやスーパーまで行って好きなおやつを買いに行く」とか。

 

だんだん歩ける自信や体力がついてくると旅行やお出かけして美味しいものを食べに行くなどの目標に置き換えていくと良いでしょう。

 

こういった目標は本人の中で完結するのではなく必ずだれかと共有しましょう。近所の方や家族や施設のスタッフでも良いです。

 

「〇〇がやりたくて、この前やっとできるようになったの。次は□□を目標にしようかしら。」などと普段の会話の中で自分の目標を話すことで自分の中で目標に向けて何をするべきかを整理することができますし、他者に語ることで達成に向けた努力を刺激してくれます。

おわりに

回復期に勤めて3年が経ち、経験を少しづつ積むようになって患者様の退院後の姿まで想像できるようになってきました。(本来、もっと早く身につけなければいけない能力ですよね…。)

 

今回書いた文章が全ての方に対して的を射ているとは限りません。

 

まだ理学療法士になってたった3年の青臭い戯言も含まれています。

しかし、これが私が3年間の臨床で学んできたことです。

この文章が同業職のみなさまのどなたかの目について、修正または共感して下さるとありがたいです。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました