理学療法士が教える杖の種類と使い方

2019/11/24
 
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hayato
長崎県生まれ福岡育ち 1994年8月生まれの獅子座 血液型はB型でマイペースな性格 趣味は料理と音楽鑑賞とゲーム 東京都の回復期病院勤務で理学療法士2年目の新米です。患者様のリハビリを日々お手伝いしています。 好きな分野は摂食嚥下・解剖学・生理学

理学療法士が教える杖の種類と使い方

 

杖は色々な種類があります。「杖の目的って何?」、「どれをどうやって使えばいいの?」、「どういう時に使えばいいの?」など分からないことがたくさんあると思います。

医師やリハビリスタッフの指示でなんとなく選ぶよりも、自身で簡単に知識として覚えておくと良いでしょう。また、医療職のみなさまも患者様に適切な杖を提案できるように、今回の記事を読んで頂きたいです。

杖を使う目的

  • 歩行時の安定性の拡大

歩いているときに身体を支えたり、バランスを補助します。杖は3本目の脚のようなものです。

  • 歩行時の駆動・制動

私たちは、下肢の切断し、装具の処方がなされていない方を除けば、脚が2本しかないので歩くときに「1・2 1・2」というリズムでしか移動できません。

3本目の脚である杖を使えば、「1・2・3 1・2・3」のリズム(3動作)での歩行が可能となります。杖の出し方にも種類があるので後述したいと思います

動作が1つ増えることで歩くスピードは落ちます安定性は向上します。

歩く速さを意識する前に、まず転ばないことが大前提です。前述しましたが、安定性を高めるために杖を使います。

  • 免荷・荷重制限

杖に体重をかけると、杖を持っている側と反対側の脚にかかる体重が少なくなります。

脚を骨折し、手術を行ったばっかりの方は『荷重制限』を設けることが多々あります。手術とは折れた骨を一時的にピンやワイヤーなどで繫ぎとめるものです。骨を元の状態にくっつけたわけではありません

この状態で、元の生活通りに活動を行うと折れた骨への負担が大きくなります。骨への負担が大きすぎると、折れた骨がずれてしまう可能性があります。そして、ずれたまま骨が回復してしまうと、『変形』してしまいます。

『変形』することで、骨が不安定になったり(偽関節)、左右の脚の長さが変わってきてしまいます(脚長差)。

これが怖いからと言って、骨が完全にくっつくまで寝たきりになるのも良くないです。寝たきりになることで、関節が固くなったり、筋力が落ちてしまいます。高齢者の方ならば頭を使うことが少なくなるので認知症を助長してしまう可能性があります

また、骨折してない側の脚まで筋力が落ちてしまうことも考えられます。そうなってしまっては、骨折が完治したとしても再転倒のリスクにも繋がります。

骨折した部位に適切な荷重をかけることは、骨の治りを良くする効果もあります(骨癒合の促進)。

こういった考え方から、『荷重制限』をしながら歩いたり、筋力をつけることで骨折をきちんと治していかないといけないのです。

これは、治療者向けの内容になるのですが、荷重制限は医師からの指示なので、リハビリ職が決めるものではありません。用語としては、免荷=NBW(non weight bearing )・部分荷重=PWB(partial weight bearing)・全荷重=FWB(full weight bearing)を押さえておきましょう。

例えば、60㎏の方が1/3PWBであれば、荷重制限が設けられた下肢にかけていい荷重量は20㎏となります。体重計を用いて荷重感覚を学習させたり、歩行練習をおこなったりすると思います。注意して欲しいのですが、20㎏ピッタリに荷重しなければいけないということではないです

20㎏以下なら荷重をかけていいのです。歩行練習で体重計に脚を乗せた結果、10㎏だった際にフィードバックとして「もう少し体重をかけても良いですよ!」なんて教示は不要です。20㎏以内で収まっているので問題ないです。

  • 筋力低下の代償や疼痛軽減

脚の筋力が弱くなったり、杖なしで歩くと痛みが出てくる方が杖を使うことで、これらを補助したり、軽減することができます。

  • 麻痺側支持期の補助

脳卒中などで、身体の半分が動きにくくなった際には杖を使ってバランスを補助します。

杖の種類(★は介護保険適応です。)

1本杖

杖と言ったらまず、これをイメージする方が多いのではないでしょうか。C字型・T字型・L字型(オフセット型)の3種類があります。

C字型杖

C字型については、体重をかけると杖がたわみやすく、治療向きではありません。ファッションの一つとして考えた方が良いでしょう。上の写真は極端な例です(笑)

 

T字杖(左)とL字杖(右)

 

使い方としては、骨折していない側・麻痺などがない足側(健側)の手を持ち手にして、グリップは人指し指と中指で挟むように握りましょう。

1本杖の免荷率は体重の約1/6程度です。60㎏の方であれば、1本杖を使うことで10㎏免荷することができます。

1本杖は杖の中では支持力は高くはないです。杖なしでも歩くことができる方が使用した方がいいと思います。「杖が無いと歩けない!」という方は別の杖を使った方が良いと思います。

T字杖については、介護保険の適応外なので、全額購入となります。軽量化したものや、グリップ部分が細いタイプは小柄な方に適しています。また、持ち運びや収納に便利な折りたたみタイプ、伸縮性のあるタイプなどがあり、好きな色やデザインを選びましょう。

杖の合わせ方

  • 肘を30°程度曲げて、つま先から外側15cm、前に15cmで軽く握れる高さ
  • 床面から大転子までの高さ(※ 大転子とは、太もも外側の突出している骨のことです)
  • 肘を伸ばしたままで、床面から茎状突起までの高さ(※ 茎状突起とは、手首の親指側の突出している骨のことです)

引用:杖の目的・杖の合わせ方

歩き方

1本杖を使う場合、「3動作歩行」と「2動作歩行」があります。

安全なのは「3動作歩行ですが、歩行速度が遅いです。

2動作歩行」は「3動作歩行」に比べて安定性は欠けますが、スムーズな歩行が可能となります。ご自身の能力に応じて歩き方を選びましょう。

3動作歩行(健側は右側)

 

2動作歩行(健側は右側)

 

引用:杖のつき方・握り方|杖 ステッキの製品紹介|ケイ・ホスピア株式会社

 

★多脚杖

杖先が3本~5本に分かれている杖です。主流は4本杖(クワドケイン)です。この項では4点杖について紹介します。歩き方は基本的には1本杖と同じです。下の図は「3動作歩行」です。

「四点杖 つき方」の画像検索結果

画像引用:介護用品・福祉用具の通販・店舗販売 – 快適空間スクリオ

注意点としては、脚の角度が広いほうを内側に外側に杖を持ちましょう。

「四点杖 つき方」の画像検索結果

 

適応は、1本杖では足元が安定しない方です。杖先が4点で1本杖よりも安定しているため、姿勢が悪い人や、背骨が曲がった人にも適しています。

屋外などの不整地では1本杖よりも安定性が落ちてしまいます。そのため、多脚杖を使う際は自宅内や施設・病院内の移動に限定しましょう

 

≪画像引用≫

フジホーム 四点杖 ハイブリッド4 WB3597 (取寄品)

4点支持杖低重心|歩行補助杖のレンタル|ダスキンヘルスレント

★松葉杖

松葉杖の種類

松葉杖の種類

 

『松葉杖』と言ってもこれだけの種類があります。以降で1つずつ説明していきますね。この項では、標準型・調節型松葉杖(以降、松葉杖)を紹介します。

これらは、側弓が2つに分かれているみなさんが思うような典型的な松葉杖です。標準型については、一度作ってしまったら長さの調節が困難です。成長段階にあるお子様や、第三者への貸与には向いていません

最近では、握り部分の長さが調節できるタイプが主流になっています。これを、調節型松葉杖と言います。調節方法にも種類があるのですが、ネジを一個一個外して調節するタイプや、ワンタッチで調節ができるタイプなど…。もちろんオススメは後者です

松葉杖の使い方は簡単で、二の腕で杖をはさみ、安定させて、手のひらで体重を支えます

握り手の高さが重要なポイントとなります。良く勘違いしている方がいますが、松葉杖は手のひらで体重を支えるのであって、わきの下で支えるのではありません

わきの下には腕の筋肉を動かすために必要な神経(橈骨神経など)が密集しており、ここを圧迫してしまうと重篤な神経麻痺がおこる可能性があります。また、血管も多く集まっており、長期間の圧迫により血流による血管への刺激が強まり、瘤(こぶ)を作ってしまう可能性があります(上腕動脈瘤の形成)。

このような事態にならないためにも、松葉杖を適切な高さに設定しましょう。松葉杖の一番上の部分~わきまでを、指2~3本ほど空けるようにしましょう。さらに、わきに接触したとき、その部を強く圧迫しないように弾性包帯などでクッションを作っておくのも良いでしょう。

松葉杖は、骨折や捻挫、下半身の麻痺や股関節症などにより、片足に体重をかけられない人に適しています。ただし、松葉杖を使用するにはある程度の幅が必要なため、自宅で使用する場合には、十分なスペースが確保できるかどうか確認しておきましょう。

松葉杖を両側で使用する場合、免荷できる量を幅広く変化することができ、完全免荷~体重の1/10~1/2まで調節することができます。片側のみの使用で患側にかかる荷重量は体重の約2/3程度です。

松葉杖を使った歩き方

  • 右の松葉杖を出す⇒左足を出す⇒左の松葉杖を出す⇒右脚を出す
  • 右の松葉杖・左脚を同時に出す⇒左の松葉杖・右脚を同時に出す
  • 両側の松葉杖を同時に出す⇒両側を大きく振り出す
  • 両側の松葉杖を同時に出す⇒両側を小さく振り出す
  • 両側の松葉杖を同時に出す⇒健側の脚を出す(患側は完全免荷
  • 両側の松葉杖を同時に出す⇒患側の脚を出す⇒健側の脚を出す

★オルソクラッチ

オルソクラッチ

整形外科型松葉杖とも呼ばれます。

長所は、支柱の素材がアルミニウムなので軽くて使いやすいです。短所は、体重の支持力が通常の松葉杖よりも弱いです。適応は標準型、調節型松葉杖と同じです。

★アンダーアームクラッチ

 

簡単に言えば、折りたためる松葉杖です。携帯に便利ですね。

折りたたみ式にすることで杖自体の支持力が弱いので、下肢の不全麻痺や股関節症を罹患している方で、下肢機能がある程度残存している方が適応となります。

 

画像引用:アンダーアームクラッチ ナビス(navis) 前腕部支持型杖 (ロフ …

シュアゲイトクラッチ

 

画像の右側です。あまり使われている場面を見かけないので、紹介程度にしときます。

標準型松葉杖の2本の側弓が接地部で円形に接続している松葉杖です。接地部分が特徴的ですね。床との接地面がこのような楕円となっていることで、歩行の進行方向(前後方向)への安定性が増します

短所としては、側方への対応が行いにくいです。また、球状の接地部が破損しやすく、体重を全負荷すると危険です。

適応は、一側の下肢骨析など、全荷重を必要としない人です。

★ロフストランド杖(ロフストランドクラッチ)

「ロフストランドクラッチ」の画像検索結果

1本の脚とグリップ(体重を支える握り)とカフ(握り棒の上についている輪っか)を備えた杖です。

カフの形状には、大きく分けてU字型(オープンカフ)とO字(C字)型(クローズカフ)の2種類があります。U字型腕にはめやすいですが、安定性に欠けます。一方、O字カフ固定性が高いですが、腕がカフから外れやすく、転倒した際に事故に繋がる可能性が高くなります

ロフストランド杖のカフの種類

1本杖では、少し安定性がないな…という方や、松葉杖が使用困難な場合には両側にロフストランドクラッチを使用します。ロフストランドクラッチの免荷率は体重の約2/3です。

★エルゴグリップクラッチ

造りは、ロフストランドクラッチと似ていますが、合成樹脂製のカフとグリップが人工工学的(フィット感を実現している)に一体形成された形状をしています。また、アルミニウム素材なので、軽量かつ耐荷重(約100~120㎏)です。

また、見た目がシンプルでスタイリッシュであるため、若年層の方にも人気があります。

 

画像引用:エルゴグリフクラッチ オープンカフ 【プロト・ワン】

★プラットフォームクラッチ

別名はリウマチ杖です。

杖の上部に台座があり、この部分に肘を乗せます。つまり、前腕で支持するので、手関節や肘関節に体重がかからないです。

短所は、体重の支持が弱いことです。また、床と平行の位置関係にある台座が乗っかっている杖を持ち上げるのは時間がかかります。つまり、歩行速度が落ちてしまいます。さらに、前腕部をベルトで固定しているので、転倒などの際に危険です。

適応は、手関節炎や慢性関節リウマチなどの関節炎によって手指や手関節(手首)に強い負荷をかけられない方肘関節が自由に動かせない方です。

 

画像引用:プラットホームクラッチ(杖・つえ・ケイン) TY135D

★カナディアン杖(カナディアンクラッチ)

最近ではあまり利用されていません。一応説明しておきます。ロフストランドクラッチと造りが似ています。違いは、カフの位置です。

 

ロフストランドクラッチが前腕(肘より先)にカフがあるのに比べて、カナディアンクラッチは二の腕にカフ(上腕三頭筋カフと言います。)があります

 

前腕で支えるか、二の腕で支えるかの違いですね。

通常は、二の腕の方が前腕よりも身体を支える力が強いので、「1本杖では歩くのに不安があるけど、松葉杖や多脚杖を使うまでもないな…。」という方で、腕の力上腕三頭筋)が弱っている方にはカナディアンクラッチが好ましいと思います。

 

とは言っても、最近ではカフの位置を変更できるロフストランドクラッチがあるので、そちらの方をオススメします。

 

画像引用:【完全保存版】杖の種類、完全解説:松葉杖がいいのか、ほかの杖がいいのか?

ノルディックウォーキングポール

2本杖・ウォーキングポールとも呼ばれます。

足腰が弱ってしまった方でも正しい姿勢で安定した歩行ができ、膝や腰、股関節などへの負担が少ないこと、また全身を使うので運動効果が高いです。

 

画像引用:ノルディックウォーキング – Wikipedia

 

治療者様用に文献を紹介します。

ノルディック・ウォーク

長さ

全日本ノルディック・ウォーキング連盟が推奨している長さを参考にして、立位で肘関節90°屈曲位より1~2㎝下げた高さで把持し、床に垂直についたときの長さに設定。

歩行方法

ディフェンシブ・スタイルといわれる方法で、①前方に突くポールは床に垂直に、前足と同じ位置に突く。②ポールは床に軽く置くように突く。③反対側のポールは後ろ足の横に添えるようにする。④肩の力を抜きグリップは軽く握る。

結果

歩隔・体幹側屈振幅・身体重心左右移動振幅が通常歩行と比べて有意に減少した。⇒ノルディック・ウォークは前額面上において安定性の高い歩行であることが示唆された。

 

ノルディック・ウォーキングが高齢者の歩行に与える影響を改変引用

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長崎県生まれ福岡育ち 1994年8月生まれの獅子座 血液型はB型でマイペースな性格 趣味は料理と音楽鑑賞とゲーム 東京都の回復期病院勤務で理学療法士2年目の新米です。患者様のリハビリを日々お手伝いしています。 好きな分野は摂食嚥下・解剖学・生理学

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