食欲低下と加齢

摂食嚥下
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食欲低下と加齢

 

先日の出来事をツイートしたので引用します。

食欲が低下している場面は現場でたびたび見かけることがあります。

原因は複数考えられるのですが、今回は「加齢」に注目して解説します。

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身体に起こる様々な変化

加齢による食欲低下は生理現象や環境によるもの様々です。

例として幾つか挙げてみました。一つひとつ見ていきましょう。

基礎代謝の低下

その主な理由として筋肉などの除脂肪量の低下があげられます。

 

除脂肪体重とは、その個体の全重量から、その個体が持つ脂肪組織の重量を差し引いた、体重に関する指標の1つである。

このことは活動時のエネルギー代謝量が低くなることにもつながります。

 

また、活動量の低下などその他複数の要因が組み合わさり、総エネルギー消費量(24時間相当)も加齢に伴い低下していきます。

胃前庭部の拡張不足

加齢によって胃の粘膜が萎縮します。

 

萎縮すると胃酸分泌が低下し、病原体への抵抗力が低下します。鉄やビタミン吸収能力も落ちてしまいます。

 

また、加齢によって胃の弾力性も低下します。つまり、一度に大量の食べ物を胃にためておくことができなくなります。

消化に時間がかかる

消化器全般、多少なりとも加齢の影響を受けます。

 

私たちもそうですが、『消化する能力が低下する→消化不良→下痢→食欲低下』となることは臨床でよく見かけます。

 

加齢だけでなく薬剤の影響でも似たような現象が起きます。

 

食欲がない時は服薬状況や排便状況を確認するもの大事です。

味覚・嗅覚の低下

加齢変化で味蕾が減少味細胞の変性により甘味、塩味が感じづらくなります。

 

健常高齢者を対象にした報告では、単味質の場合は認知能が低下しないこと、複合味の認知は加齢の変化を強く受けるとされています。

 

これも臨床で経験することなのですが、というか冒頭のツイートそのまんまなんですが、『味覚・嗅覚の低下』と食事を全量摂取する方が少ないことは繋がっているような気がします。

 

飯上がっている料理が美味しいかどうか尋ねると、ほとんどの方が「まずい。味が薄い。」と言います

 

自宅では自分好みに味を調整できるけど病院ではそうはいかないです。この言葉を聞くと「普段から濃い味付けのものを召し上がっているんだなぁ」と考えてしまいます。

 

そして、「まずい」と言った方の大半が高血圧です…。

口腔内の環境

 

口腔ケアが不十分であり、舌が舌苔(ぜったい)で汚れていることも食欲低下を招きます。

味蕾の上に舌苔が覆い被さるようなイメージです。

そうなると味物質が味蕾に到達せず、味覚を感じにくくなることが考えられます。

また、苦味などを伴う場合に口腔カンジダ症を併発している可能性もあります。

唾液の分泌量の低下

唾液の分泌が低下すると食塊形成が困難になること(食塊形成作用の低下)、味覚が低下する(溶解作用の低下)こと、口腔粘膜の乾燥により咀嚼運動が阻害される(湿潤作用)ことが挙げられます。

 

食塊形成作用:食べ物を湿らせることで、粉砕しやすく食塊形成を容易にする
溶解作用:食べ物の中の味物質を溶解することで味覚を促進する
潤滑作用:口腔粘膜を湿らすことで、咀嚼、嚥下、発語などの運動を円滑にする

 

とは言っても、最近の見解では加齢によって減少するのは安静時唾液分泌であり、咀嚼中の唾液分泌は刺激時唾液分泌は低下しにくいという報告もあります。

 

安静時の唾液分泌低下は起こると言いましたが、もう少し詳しく書くと加齢変化のみでは唾液の分泌能は起こりません

 

ただ、予備力は低下するので加齢による体内の水分量の低下や服薬による影響で脱水しやすく、口腔内が乾燥している方は多くいます。

 

予備力とは、ある機能について最大能力と平常の生命活動を営むのに必要な能力との差であるが、予備力が低下することにより、平常以上の活動を必要とする事態が生じたときに対応できなくなる。

 

認知の低下によるもの

認知機能の低下により先行期・準備期・口腔期の過程が影響を受けやすいです。

 

先行期:食べ物を認知し、食具を使用して口まで運ぶ時期
準備期:食べ物を口腔内に取り込み、咀嚼し、食塊形成する時期
口腔期:舌が挙上し、食塊を咽頭期送り込む時期

 

認知機能の低下による摂食嚥下障害は具体的には記憶障害や失認、失行など様々です。

 

食具の使用方法が分からずに混乱してしまい、結果として食欲が低下することや、開口障害や口腔顔面失行により食べ物を口に入れることができなくなります。

 

また、食欲の低下は認知症の周辺症状の一つであるうつ病に起因するものが考えられます。

義歯の不適合

義歯が合っていないと痛みを伴い食欲が低下します。

私、この前親知らずを抜去したのですが、顔が大きく腫れ、傷跡がとても痛くて…。

 

そのときに本当に食欲が落ちてしまったんです。

 

痛みは食欲を低下します。この身を持って実感することができた良い経験でした。

 

話が逸れてしまいました。

このように義歯が合わないことで痛みが出てくることや、合わないから外して舌や歯茎で咀嚼する方もいます。

舌や歯茎で咀嚼できるものは限界があります。

例を挙げると『亜鉛』を摂取できる食べ物を挙げてみます。

発毛に必要な亜鉛

舌と歯茎で押しつぶせるものはほとんどありませんね。

だからこういう食品を避けてしまいます。

 

するとどうなるのか。言わもがな亜鉛が不足します。

亜鉛は不足すると味覚障害が引きおこされることが指摘されています。 口の中の味を感じる器官を「味らい(みらい)」といいますが、味らい細胞は新陳代謝が活発なため、亜鉛が不足すると細胞の生まれ変わりに支障をきたし、味覚の低下がおこると考えられます。
『義歯の不適合→咀嚼困難→亜鉛不足→味覚の低下→食欲の低下』と繋がってきます。

 

食欲の低下があるときは口腔内の環境や義歯の適合性についても評価することが大事ですね。

おわりに

この記事を書きながら学んだことなのですが、食欲の低下は加齢による原因もあれば口腔内の環境や食事環境によっても左右され、原因が多種多様であることに気が付きました。

 

単純に「食欲がない」から「栄養不足」になり「リハビリの効果が芳しくない」という結果だけを受け止めるのではなく、「なんで食欲がないのだろう」と振り返って原因を吟味してみてはどうでしょうか。

 

原因を吟味するのが理学療法士であっても構いません。むしろ積極的に関わって欲しいと思っています。

 

摂食嚥下はチームでアプローチするものですからね。

参考文献

NCBI - WWW Error Blocked Diagnostic

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