摂食嚥下に必要なベッド上のポジショニング

アイチャッチ画像摂食嚥下
この記事は約10分で読めます。

摂食嚥下に必要なベッド上のポジショニング

 

今回は、姿勢と嚥下の関係やベッド上のポジショニングなどについてに話していきます。内容が専門家向けなので、一般の方には難しい内容ですが、できるだけ内容を嚙み砕いて説明していこうと思います。

スポンサーリンク

姿勢と嚥下の関係

前々回に、食事を自力摂取する場合のポジショニングのポイントに『両上肢は机の上に置いておく』、『姿勢保持筋の緊張は嚥下筋の活動を阻害するため左右対称の姿勢を心がける』という内容を覚えていますでしょうか。

 

摂食嚥下のための嚥下筋及び上肢運動は全身的な姿勢制御を基盤としています。

姿勢と嚥下の関係

姿勢と嚥下の関係

 

上の図の「下肢の支持」、「骨盤帯の制御」、「胸郭の制御」、「頭頚部の制御」は筋による姿勢制御を受けます。

この4つのうち、どれか1つでもバランスを崩してしまうと上肢や嚥下筋までもが姿勢制御のため過活動となったり、座位姿勢の崩れにより生じる頭頚部のアライメントの変化が嚥下筋の活動を阻害してしまいます。

不良姿勢は誤嚥のリスクを増大させる

円背・骨盤後傾・頭部の前方突出の座位姿勢は不良姿勢とされています。

 

頸部伸展位は、嚥下時の喉頭の移動距離を延長させます。そうすると舌骨上下筋群の活動量が増えます。活動量が増えるということは、努力量が増えるということです。努力量の増加は嚥下困難感の増大に繋がります

 

また、頸部伸展位が続くと、頸部筋の拘縮を招き、頭頚部の動きが悪くなったり、舌骨上筋群が付いている下顎や舌にも影響を与え、咀嚼や食塊の形成を阻害します。

 

脊柱の右側屈は胃の噴門部が開きっぱなしになりやすく、誤嚥性肺炎の要因の1つである逆流性食道炎を起こしやすくなります。

 

ここまでで何が言いたいかというと...

 

不良姿勢は嚥下の5期全てに影響を及ぼすということです。

嚥下の5期モデルと姿勢の関係は下の図を参照ください。

嚥下の5期モデルと姿勢の関係

嚥下の5期モデルと姿勢の関係

 

股関節の内転筋が嚥下に関わる⁉

題名が分かりづらいですかね…(笑)

要は筋膜の話になります。

筋膜とは?

筋膜は筋肉を包む膜ですが、細かいところでは筋繊維を、大きなところでは体全体を包む膜です。

それらの筋膜はある一定の法則に従い連結しあい3次元的なバランスを保っています。そのため、筋膜の一部に機能障害が起きると、離れた部位の機能に影響を及ぼすこともあります。

筋膜に機能障害が起きると筋膜は水分を失い柔軟性の無い筋膜繊維となり、自分の着ている服を一部分から引っ張られたような窮屈な状態になります。この窮屈さは水分を失い柔軟性をなくした筋膜だけでなく、そこにつながる筋膜の均衡を阻害する因子となります。

引用:筋膜とは?|トリガーポイント™公式サイト

Deep Front Line

Deep Front Line:DFLと呼ばれる筋膜の連結について説明します。

 

Deep Front Line

Deep Front Line

構成筋

  • 側頭筋
  • 咬筋
  • 舌骨上筋群
  • 舌骨下筋群
  • 斜角筋
  • 椎前筋(前頭直筋と頭長筋、頸長筋(斜角筋も含まれることもある)、外側頭直筋の4筋を総称する。
  • 横隔膜
  • 腸腰筋
  • 腰方形筋
  • 股関節内転筋
  • 後脛骨筋
  • 長母趾屈筋
  • 長趾屈筋

機能

  • 人体の中心軸を成します。
  • 足部の内側縦アーチを構成します。
  • 下肢を安定させます。
  • 腰椎を前方から支持します。
  • 胸郭を安定化させます。
  • 頭頚部の安定化に作用します。

要は、呼吸と姿勢に作用するということです。

DFLの3つの“軌道”

DFLは摂食嚥下時の頸部前屈のための頸・頭長筋(上後軌道)咽頭(上中軌道)咀嚼・舌骨周囲筋(上前軌道)が属している重量なLineとなります。

上後軌道: 頸・頭長筋 ⇒ 前十字靭帯 ⇒ 横隔膜

上中軌道: 咽頭・斜角筋 ⇒ 縦隔・心膜 ⇒ 横隔膜腱中心 ⇒ 横隔膜

上前軌道: 咀嚼筋 ⇒ 舌骨上下筋群 ⇒ 胸内膜筋・胸横筋 ⇒ 横隔膜

 

上の3つの軌道はすべて横隔膜で合流します。そして下肢へと繋がっていきます。

 

横隔膜から下肢への連結
横隔膜⇒腸腰筋・腰方形筋⇒股関節内転筋⇒後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋

先ほどの引用でも話しをしましたが、これらはひとつなぎ(連結)しています。

 

連結することでLineを形成する筋がお互いに助け合って働くことができますが、逆に考えれば、どこか1つの部分の問題(張力の低下など)が生じれば、その問題はLine全体へと波及していきます

 

嚥下障害の人で舌骨や喉頭の動きが悪くなっているのは、舌骨上下筋群の問題というだけでなく、体幹や下肢の問題がLineを通じて、間接的に問題を引き起こしている可能性もあるということです

姿勢分析のポイント(背臥位)

さて、本題の姿勢分析のポイントです。姿勢分析は骨の位置関係や方向(向き)をいかに的確に把握できるかが重要になってきます

 

その人の姿勢から骨の位置関係を把握すると何がいいのか。ずばり、筋の長さを推測できるのです。

 

起始~停止間の距離が短い⇒筋は短縮している
起始~停止間の距離が長い⇒筋は収縮または伸長している

 

また、筋を触診したり、関節のエンドフィールを検証することで筋の状態を検証していき、舌骨や舌の運動に影響している筋を特定していきます。

 

筋の状態を知り、特定することで筋を伸長させればいいのか、筋の収縮力を向上すればいいのかなどの介入方針が決定していきます。

背臥位での姿勢分析のポイント(前額面)

背臥位(前額面)での姿勢分析

背臥位(前額面)での姿勢分析

上記の図を基に、左右の非対称性と回旋が目立つところを探しましょう。

 

1.顔・胸郭・骨盤の向きを見て回旋の有無確認します。上図の乳様突起、胸骨、剣状突起、上前腸骨棘の左右差、触診にてどちらが回旋しているか確認しましょう。

 

2.高さの左右差を見て、体幹が側屈していないか、挙上または下制していないかを確認します。上図の乳様突起、肩峰、第10肋骨、上前腸骨棘の左右差をみましょう。

 

3.下肢が回旋していないかを確認するために膝蓋骨と、つま先の向きをみましょう。

背臥位での姿勢分析のポイント(矢状面)

背臥位(矢状面)での姿勢分析

背臥位(矢状面)での姿勢分析

頭部の過伸展がないか、胸郭の過度な伸展・屈曲や骨盤の過度な前傾または後傾がないか探しましょう

 

1.顔の向き(屈曲/伸展)は下顎と胸骨柄上縁との距離をみましょう。
ちなみにこの距離は評価として長さを図ってもよいと思います。ここで嚥下機能の評価方法を2つほど紹介します。

嚥下機能の評価方法

相対的喉頭位置

相対的喉頭位置

引用:脳血管障害による嚥下運動障害者の嚥下障害重症度変化と嚥下運動指標および頸部・体幹機能との関連性

オトガイ~甲状切痕問距離(genion-thyroid distancel:GT)、甲状切痕~胸骨上切痕問距離(thyroid-sternum distance:TS)をメジャーで計測します。そして、相対的喉頭位置(relative thyroid position:T-position=GT/(GT+TS))を算出します。

GSグレード

GSグレード

引用:脳血管障害による嚥下運動障害者の嚥下障害重症度変化と嚥下運動指標および頸部・体幹機能との関連性

舌骨上筋群の機能グレード(GSグレード)です。グレードが高いほど、舌骨上筋群の機能が高いです。

これらを用いて嚥下の機能を評価できます。

嚥下運動障害者のT位置は、下降により問題が生じるケースが多いが、上方に位置する場合も平均群より問題が大きいことが明らかになった。T位置上昇は、頸部・体幹機能低下によって生じる頸部筋緊張異常によるものと推察された。しかし、各群の中にも、GTやTSが標準より長いか短いか、喉頭挙上筋である舌骨上筋群の活動が強いか、頸部可動域が標準以上であるかどうかで、嚥下障害の重症度は影響を受ける傾向がみられた。従って、これらの嚥下運動に影響を与える複数要素を複合的に評価しながら、嚥下運動の改善を図ることが必要であると考えられる。

引用:回復期以降の嚥下運動障害者の相対的喉頭位置は下方にあるか

※ここでいうT位置の平均は0.41±0.07であり、上方群はT位置<0.34で下方群はT位置>0.47です。

話を戻しましょう。背臥位姿勢を側方からみたときのポイントの続きです。

 

2.肩甲骨・胸郭・腰椎・臀部と床との接触を確認します。

それぞれの部分の下に手を入れて圧を評価します。どこかが浮いていたら、どこかに負担がかかっているはずです。タオル・枕等で圧が均等になるように調整しましょう。

 

3.股関節・膝関節の屈曲角度を確認しましょう。骨盤の前後傾や、膝の裏に手を入れて確認しましょう。

姿勢分析のポイント(座位)

座位の姿勢ポイント

座位の姿勢分析ポイント

 

ここでのポイントは「左右の非対称性と回旋が目立つところがどこか、抗重力伸展活動があるか」です。

 

1.乳様突起・胸骨・剣状突起・上前腸骨棘を触診し、顔面、胸郭、骨盤の向き(回旋)を確認しましょう

 

2.乳様突起・肩峰・第10肋骨・上前腸骨棘を触診し、高さの左右差を確認しましょう。

 

3.脊柱が生理的弯曲頸椎前弯・胸椎後湾・腰椎前弯)しているか、骨盤が前後傾中間位になっているか確認しましょう。

 

4.脊柱起立筋・大腿と下腿の筋緊張を確認して下肢・体幹の抗重力が活動しているかを確認しましょう。

さらに!ポジショニングの基礎を学びたい方へ…。

ここまで読んで頂きありがとうございます。

 

今回の内容に関連して、noteにて明日から臨床で使える!ポジショニングの教科書を作成致しました。

 

Twitterにてご好評頂いています!!

今回の記事を読んで少しポジショニングに興味を持ってくれた方、さらに基礎を学びたい方に向けて書いています。

 

先着10名!残り2名です!(令和2年6月21日現在)

ご購入して下さった方々ありがとうございます!

 

¥300

 

で販売致します!!

購入部数が増えたり、記事の内容を追加した際には値段を上げていきます

是非、この機会にご購入の検討を宜しくお願い致します

おわりに

ポジショニングは骨の位置関係や筋の状態を知ることで理論的に解決して欲しいと思います。

1日のうち、寝ている時間はリハビリの介入時間よりも遥かに長いです。いくら介入内容が洗練されて効果のあるものでも、その他の生活の時間に不良姿勢が続けば、その効果は激減するはずです。

今回の内容を、ぜひ明日からの臨床に活かし、あなたのリハビリを効果のあるものにして欲しいです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました