誤嚥を防いで肺炎を予防しよう!~嚥下体操の方法~
今回のテーマは「介護予防」です。
その中でも誤嚥を防ぐ運動を紹介しようと思います。僕は仕事の昼休憩の時間でちらっと患者様のお食事場面を観察しています。看護師さんが介助していたり、言語聴覚士の方が摂食訓練をしています。
ただ、介助や訓練を受けている人たちだけが問題があるとは限りません。介助や摂食訓練を受けていない整形疾患で入院している高齢者の方も水を飲んで「ゲホゲホ!」とムセている場面をよく見かけます。
日本人の死亡原因と肺炎の原因
まず下の図をご覧ください。
厚労省から発表された「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)」を基に、日本人の死亡原因のグラフを作成したものです。
「肺炎」は7.2%ですね。これを多いと思うか、少ないと思うか...。
また、肺炎による死亡者の96.8%が65歳以上、肺炎が原因で亡くなる60歳以上の高齢者のうち96%が「誤嚥性肺炎」であるというデータがあります。
誤嚥性肺炎の原因
「肺炎」で死亡する人のほとんどが「誤嚥性肺炎」が原因で亡くなっているのがわかります。
誤嚥性肺炎の概要については以下の引用を参考にして下さい。
概要
物を飲み込む働きを嚥下機能、口から食道へ入るべきものが気管に入ってしまうことを誤嚥と言います。
誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のため唾液や食べ物、あるいは胃液などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症します。
吐物を大量に吸引した場合には胃酸による化学性肺炎を起こすことがあり、メンデルソン症候群と呼ばれます。
疫学
嚥下機能の低下した高齢者、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患や寝たきりの患者に多く発生します。肺炎球菌や口腔内の常在菌である嫌気性菌が原因となることが多いとされます。
発症のメカニズム
高齢者や神経疾患などで寝たきりの患者では口腔内の清潔が十分に保たれていないこともあり、この場合、口腔内で肺炎の原因となる細菌がより多く増殖してしまいます。
また、高齢者や寝たきり患者では咳反射が弱くなり嚥下機能が低下します。
その結果、口腔内の細菌が気管から肺へと吸引され、肺炎を発症します。
また、栄養状態が不良であることや免疫機能の低下なども発症に関与してきます。他方、嘔吐などで食物と胃液を一度に多く誤嚥して発症する場合もあります。
症状
発熱、咳、膿のような痰が肺炎の典型的な症状です。
しかしこれらの症状がなく、なんとなく元気がない、食欲がない、のどがゴロゴロとなる、などの非特異的な症状のみがみられることが多いのが誤嚥性肺炎の特徴です。
診断
誤嚥が明らかな場合や嚥下機能低下が確認されている患者では胸部エックス線写真で肺炎像を確認することで診断できます。
白血球増加や炎症反応の亢進も重要な所見です。
寝たきりの高齢者など誤嚥性肺炎の高リスク患者で肺炎が発症した場合には、本症を考えます。
治療
抗菌薬を用いた薬物療法が基本です。呼吸状態や全身状態が不良な場合は入院して治療を行います。
同時に口腔ケアの徹底、嚥下指導も重要です。
また、嚥下機能に悪影響を及ぼす薬物を内服していないかチェックし、その上で、嚥下反射を改善する効果が確認されているACE阻害薬などの適応を検討することがあります。
生活上の注意
喫煙で気道粘膜の浄化が抑制され、細菌が付着しやすくなるとされるため禁煙は重要です。
また誤嚥防止のリハビリテーションも有効とされています。介護者は、患者の食事の際に十分に上体を起こし、ゆっくりと咀嚼・嚥下するよう指導することが大切です。
肺炎球菌のワクチンも受けておくべきでしょう。
予後
高齢者や中枢神経系障害などで寝たきりの患者に発症し、慢性的に繰り返し発症する場合もあるので、予後不良の場合も少なくありません。
誤嚥性肺炎のパターン
また、誤嚥性肺炎には3つのパターンがあります。
2.本人や周囲が気付かないで誤嚥しているパターン
3.夜間の睡眠中に胃や食道からの逆流物を誤嚥するパターン
飲食物をむせて、そのまま誤嚥するパターン
このことを、顕性誤嚥と言います。
ここで勘違いして欲しくないポイントがあります。それは「ムセているから誤嚥だ」と考えは間違いであるということです。ムセと誤嚥の区別をつけましょう。
ムセ:気管に入りかけた飲食物や唾液の一部を排除するための正常な反応
ムセている人が必ずしも誤嚥しているわけではないのです。
本人や周囲が気付かないで誤嚥しているパターン
口から喉の奥にかけて細菌の巣(コロニー)ができ、この細菌を含んだ汚染された唾液を本人や周囲が気付かないで誤嚥している場合です。これのことを、不顕性誤嚥と言います。
先ほどの1タイプの考えの逆ですね。ムセなしに気管に入ってしまう場合もあるのです。
これはよく見逃してしまうタイプであり、気づけば肺炎になってしまっていた…。なんてことがあります。
あらかじめ、ポジショニングや自身で体操をするなどのリハビリで予防していかなければなりません。
夜間の睡眠中に胃や食道からの逆流物を誤嚥するパターン
次のページで誤嚥予防の体操を実際に紹介していきます。
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