大腿方形筋
股関節外旋筋群の位置関係
ポイントは以下の通りです。
・坐骨結節の高さで平行に大腿方形筋が走行している。
・梨状筋と大腿方形筋の間を上・下双子筋が走行している。
・上下双子筋の間を内閉鎖筋が走行している。
起始停止
起始:坐骨結節の外面
停止:大転子後面下部の転子間稜
神経支配
仙骨神経叢(L4~S2)
血液供給
下殿動脈
働き
・腸骨大腿靭帯などと協同して股関節の安定性に関与します。
・股関節外旋
・股関節内転
動画が無くて申し訳ございません。しかし、外旋6筋の位置関係から外旋以外の働きを覚えることができます。先ほどの股関節外旋筋群の位置関係の項を参照してください。
外旋6筋の中で上方に位置するものは外転作用があり、下方に位置するものは内転作用があります。
触診
大腿方形筋を触診するためには坐骨結節を触診できるかが重要です。
被検者は腹臥位とし、検査側の股関節を外転させます。そして、その状態で坐骨結節の位置を触診して把握しておきましょう。坐骨結節の一番触れるとこから1横指ほど外側が大腿方形筋の起始部(坐骨結節外面)です。
坐骨結節外面に対して遠位より指を当てます。このときの指先は坐骨結節の高さに合わせましょう(下図)。なぜなら大腿方形筋は坐骨結節からまっすぐ外側に向かって走行しているからです。
この状態で股関節の外旋運動を自動介助運動で反復しましょう(上右図)。触診部位にて大腿方形筋の収縮を感じることができると思います。
関連疾患
・梨状筋症候群
・変形性股関節症
・大腿骨頸部骨折
股関節屈曲角度と深層外旋筋群の伸長率の関係性
股関節の屈曲の筋由来の制限因子の1つとして後面筋の大殿筋・ハムストリングスの短縮・拘縮が考えられます。
しかし、臨床場面で患者の股関節を屈曲した際に伸張感(ツッパリ感)を感じる部分は、これらの筋とは違う部分であることが多くあります。
むしろ股関節の外旋筋群の走行に一致した部位に伸張感を感じることが多いような気がします。先ほども記述しましたが、股関節外旋筋群には股関節伸展作用があることが知られています。
とすれば、股関節屈曲角度の制限因子として股関節外旋筋群が関与すると考えてもおかしくありません。
以下に、股関節屈曲角度と外旋筋群の伸張率についての表を載せておきます。縦が筋の名称、横が股関節の屈曲角度です。
大腿方形筋の伸張率が高いですね。股関節の屈曲制限がある方は大腿方形筋のリラクゼーション等でアプローチすると改善が図れそうですね!
参考文献はこちら
大腿方形筋は股関節屈曲・外転・外旋肢位の制限因子となりやすい
股関節外旋筋である大腿方形筋が股関節屈曲・外転・外旋肢位の制限因子となりやすいのは面白いですね。
臨床で出会った人工股関節全置換術後の患者様は、下衣更衣動作や靴下着脱動作の獲得に苦労することが多い印象を受けます。
下衣更衣動作や靴下着脱動作が困難とはつまり、股関節屈曲・外転・外旋の複合的な可動域が小さくなってしまっているケースが多いということです。
股関節深層外旋6筋の中で、股関節屈曲は梨状筋・内閉鎖筋・大腿方形筋が、股関節外転は大腿方形筋と外閉鎖筋が関節運動を制御しています。
吉田らによる報告を以下に示します。
股関節中間位からの外旋に伴い深層外旋筋群はすべて弛緩した.一方、屈曲に伴い梨状筋及び大腿方形筋が伸張され、外転に伴い梨状筋、上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが大腿方形筋、外閉鎖筋は伸張された.複合的な運動では、屈曲位からの外転では梨状筋や上・下双子筋、内閉鎖筋は弛緩するが、大腿方形筋は伸張され、さらに外旋が加わると大腿方形筋は最大限に伸張され、筋線維が切れる程であった.とくに大腿方形筋を上下部の二等分した場合の下部の線維で顕著であった.
大腿方形筋へのアプローチは股関節の可動域を改善するために非常に大事であることが分かりましたか?
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