舌圧測定の意義と実施方法

摂食嚥下
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舌圧測定の意義と実施方法

 

摂食嚥下障害の診断のための評価の一つとして舌圧測定があります。

 

舌圧には「最大舌圧」と「嚥下時舌圧」がありますが、この記事でいう舌圧測定は最大舌圧を計測するものとします。

 

今回は、舌圧測定の意義と測定方法について紹介します。

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意義

舌を口蓋に押し付ける力を計測します。

 

舌圧は舌での押し潰しによる食塊形成送り込みの力に影響します。

 

また、嚥下圧の産生にも影響します。

 

嚥下圧とは口腔内で作られた食塊を食道に送り込むための力です。

 

・奥舌の挙上と口蓋の接触
・軟口蓋の挙上と咽頭収縮による鼻咽腔閉鎖
・喉頭閉鎖

 

喉頭閉鎖についてはこちらを参照してください。

もっと広い視野で考えてみる

先ほども述べたように舌圧の弱化は舌の運動機能に影響します。

 

舌の運動機能の低下は咀嚼・嚥下に支障が出ます。
嚥下圧の産生も低下するので食塊を一気に食道に送り込めなくなります。

 

このような状態が結果としてどういう制限・制約を作り出すのでしょうか。少し考えてみましょう。

 

咀嚼・食塊形成が困難になること、嚥下圧の産生が低下することで、口腔内や咽頭に食塊が残留し、誤嚥性肺炎の原因になります。

 

また、咀嚼が不十分になることで食事内容に変化が生じることもあります。

 

野菜、ビタミンA・C・B6、葉酸や食物繊維などの栄養素の摂取が低下を招き、それが「身体的フレイル(虚弱)」につながって要介護状態になる可能性もあります。

 

また、食べこぼしが増えることや食事の時間が伸びることで誰かと食事をすることに抵抗感を覚えるようになったり、滑舌が悪くなることで人と話すのが苦手になったりと鬱傾向や認知症の・QOLの低下を招くこともあります。

 

ICFでいう参加の障害となるわけです。

 

舌圧の測定一つで全てが分かるわけではありませんが、こういった制限・制約の一要因となることは覚えておきましょう。

測定機器

舌圧測定器(TPM-02) | 製品案内 | JMS 医療関係者向けサイト

JMS舌圧測定器®︎(製造販売:ジェイ・エム・エス、歯科販売:ジーシー)を用いて測定を行います。

 

舌圧測定器・連結チューブ・プロープの3つで接続は簡単に行えます。

 

また、軽量・小型なので片手で操作ができ、画面の数値が見やすく患者さん・利用者さんへのフィードバックも可能です。

測定が難しいケース

・認知症・高次脳機能障害により指示理解が不良

・開口障害によりプロープを挿入できない、または切歯の欠損・動揺によりプロープを保持できない

・口腔顔面失行や舌癌等により舌全摘出手術後

使用方法

  1. 舌圧測定器・連結チューブ・プロープの3つを接続する
  2. 電源を入れ、内圧を調整する
  3. プロープを口腔内に挿入しプロープの硬質リングを切歯で保持する
  4. 最大の努力で口蓋皺壁に向けて舌を挙上し5〜7秒間押しつぶす

評価基準

30kpa未満口腔機能低下症と判断します。

 

この評価基準に男女差がないのが驚きました。

 

研究によると20代〜50代までは最大舌圧に男女差があること対して60代以降では男女差がなくなっていきます。(Yuri UtanoharaRyo HayashiMineka Yoshikawa,et al:Standard values of maximum tongue pressure taken using newly developed disposable tongue pressure measurement device,Dysphagia,23:286-290.2008. )

 

仕事量の違いであったり寡黙になることが考えられるのでしょうか。

サルコペニアの摂食嚥下障害

第19回日本摂食嚥下リハビリテーション学会のシンポジウムでサルコペニアの摂食嚥下障害の表の基準案が示されました。

その後、サルコペニアの摂食嚥下障害診断フローチャートが開発されました。

この項目の『嚥下関連筋群の筋力』の評価として舌圧が用いられます。

 

舌も筋肉です。加齢とともに筋力が低下することもあれば使用頻度が少ないと筋力は落ちていきます。

 

最大舌圧で20kpa以上あれば低下なしとしてサルコペニアの摂食嚥下障害の可能性ありと判断し、20kpa未満では低下ありとしてサルコペニアの摂食嚥下障害の可能性が高いと判断します。

 

先ほどの口腔機能低下症の基準の30kpaとは異なる基準であることに注意しましょう。

口腔機能低下症

口腔機能低下症の定義は日本老年歯科医学会のホームページに載っていたので引用します。

 

「口腔機能低下」とは、加齢により口腔内の「感覚」「咀嚼」「嚥下」「唾液分泌」等の機能が少しずつ低下してくる症状です。
https://www.gerodontology.jp/committee/001190.shtml

オーラルフレイルと口腔機能低下症

また、オーラルフレイルとの違いについてはこう述べられています。

 

オーラルフレイルは、わずかなむせや食べこぼし、滑舌の低下といった口腔機能が低下した状態を示すものであり、国民の啓発に用いる用語(キャッチフレーズ)である。
一方、口腔機能低下症は、検査結果に基づく疾患名である。 従って、オーラルフレイルと口腔機能低下症はオーバーラップされる部分が多く、区別されるものではない。

 

見逃すな「口のささいなトラブル」 オーラルフレイルを自分事に

このオーラルフレイル概念図を見ると分かりやすいのですが、上記図の「第2レベル」にオーラルフレイルが該当し、「第3レベル」に口腔機能低下症が該当します。

 

「滑舌低下」や「食べこぼし」、「噛めない食品の増加」などによってオーラルフレイルを認識し、「口腔乾燥」や「咬合力」、「舌圧測定」などの検査の結果、口腔機能低下症と診断される。といったところでしょうか。

 

「第1レベル」「第2レベル」で進行を食い止めることが重要になりそうです。

食形態との相関

摂取している食形態(常食・柔菜・きざみ)によって舌圧に変化があることが示されています。

 

中東らの研究事例報告では、70歳以上の日常生活において、介助を必要としない一般の高齢者21名と施設入所の41名について食形態と舌圧の関係についてこう述べています。

 

常食群の舌圧が平均24.7kPaに対し、きざみ食群の平均で21.6kPaと低い傾向が見られた。
中東教江 他.高齢者の舌圧が握力および食形態に及ぼす影響.JOURNAL OF THE JAPAN DIETETIC ASSOCIATION Vol. 58 No. 4, 2015

 

紹介したのはあくまでも報告です。舌圧が低くても常食を召し上がっている方は多くいます。

 

仮にそういった方がいらっしゃる時は「舌圧が弱いのに常食を食べていると危険だ」ではなくて、「なんで舌圧が弱いのに常食を食べれているのだろう」と疑問に思うことが大事です。

 

舌骨・挙上筋力が強くて喉頭閉鎖による嚥下圧産生が代償しているかもしれませんし、一口量を自身で調整しているかもしれないし、嚥下手技を獲得済みかもしれません。

 

評価について述べるときにはしばしばお伝えしているのですが、
一つの評価に固執しないで複数の検査を組み合わせて患者さん一人ひとりの病態を捉えていきましょう。ということです。

 

臨床の思考の一助になれば幸いです。

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