内側広筋
起始停止
内側広筋長頭(Vastus Medialis Longus;VML)
起始:大腿骨粗線内側唇
停止:大腿四頭筋共同腱へ移行。その後、膝蓋骨を介して脛骨粗面に停止
内側広筋斜走線維(Vastus Mediali Oblique;VMO)
起始:広筋内転筋腱板を介して大内転筋腱
停止:膝蓋骨内側縁および内側膝蓋支帯
広筋内転筋腱板とは?
大内転筋の腱部の一部が外側上方へ張り出して腱膜となった部分を指します。また、内転筋裂孔の前壁に張る腱膜構造のことを広筋内転筋板と呼びます。
内転筋裂孔については以下の記事で紹介しています。
神経支配
大腿神経(L2・L3)
血液供給
・大腿動脈
・大腿深動脈
・膝窩動脈の内側上膝動脈枝
働き
下腿の内旋下腿の内転
Q角と内側広筋
内側広筋の働きの1つとして膝蓋骨の安定化があります。これを理解するには『Q角』がなんなのかを知っておきましょう。
上前腸骨棘(ASIS)と膝蓋骨中央を結ぶ線と膝蓋骨中央と脛骨粗面上縁中央を結ぶ線がなす角度をQ角(Q angle)といいます。
この角度が大きいほど、膝蓋骨が内方にずれているということになります。
Q角の正常値は平均14°(男性10°、女性15°)であり、20°以上で異常と判断します。
大腿四頭筋の収縮は、膝蓋骨に対して少し外側に作用します。この力に拮抗する作用があるのは内側広筋です。
以下のリンク先でQ角について詳しく紹介されています。併せて読んで頂きたいです。

内側広筋長頭と斜走線維の筋線維の走行
内側広筋を横から見た図です。内側広筋長頭と内側広筋斜走線維では、筋線維の走行に違いがあります。遠位に進む(膝蓋骨へ近づく)につれて線維が鈍角になってきます。
- 内側広筋長頭の走行のベクトルの分力を考えた時に、膝蓋骨内方牽引ベクトル・下腿への内旋ベクトルに比べ、膝関節伸展ベクトルが大きくなります。
- 内側広筋斜走線維の走行のベクトルの分力を考えた時に、膝関節伸展ベクトルに比べ、膝蓋骨内方牽引ベクトル・下腿への内旋ベクトルが大きくなります。
内側広筋斜走線維では、膝関節の伸展作用よりも、膝蓋骨の内方牽引力が大きくなります。つまり、膝蓋骨の安定化に寄与します。
今度は、前額面上で考えてみましょう。
大腿四頭筋共同腱を基準線として、内側広筋長頭の筋線維の走行が成す角度と、内側広筋斜走線維の筋線維の走行がなす角度を比較してみましょう。
先ほどと同様に遠位に進むにつれて、これらの角度が鈍角になっているのが分かりますでしょうか?
大腿四頭筋共同腱と内側広筋長頭の筋線維の走行が成す角度:25.6±4.0°
大腿四頭筋共同腱と内側広筋斜走線維の筋線維の走行が成す角度:40.8±4.2°
臨床で応用しましょう。
せっかく知識をつけたからには臨床に応用しなければいけません。
内側広筋は膝関節伸展筋だから、膝関節伸展運動に対して抵抗運動をすればよい!
膝関節の伸展可動域が乏しいから、膝関節屈曲方向へのストレッチをすればよい!
というわけではありません。内側広筋斜走線維の走行も考慮したトレーニングを行いましょう。
例を挙げると、上記は広筋群のROMエクササイズです。長軸方向に膝関節を屈伸させる運動に加え、短軸方向に回旋の力を加えています。
触診
まず、被検者は椅子座位(できれば高さ調節のできるプラットフォームにて足部が床につかない位置に設定しましょう。)をとります。
検者の触診する指は示指・中指・環指の3本としましょう。
先ほど述べた大腿四頭筋共同腱を基本軸に、内側広筋長頭と内側広筋斜走線維の筋線維角を触診します。角度については上記をご参照ください。
およその筋線維角に対して平行に指をセットしたら膝関節伸展運動を行ってもらいます。そのときの最初の収縮を指腹で感じましょう。
それぞれの線維角をマーキングしておき、そのマーキングと膝蓋靭帯の長軸を一致させるように下腿を動かします(股関節の内旋や下腿の外旋・外反)。
この状態を作ってから、膝関節の等尺性で伸展運動をさせましょう。
それぞれのマーキング部で触診する指3本に同時に筋収縮が感じることができるはずです。
関連疾患
・膝蓋骨不安定症
・膝蓋骨脱臼
・大腿四頭筋萎縮
・膝関節拘縮
斜走線維と滑液包の癒着に注意!
内側広筋斜走線維の深部には滑液包が大きく広がっています。これは、膝関節運動時の摩擦の軽減に役に立っています。
逆に癒着してしまうと可動域制限の要因となってしまいます。
筋力強化方法
矢形の報告では、膝伸展等尺性収縮訓練を股内転等尺性収縮との共同運動を足部回外位の閉運動鎖で行うことにより、内側広筋の収縮が外側広筋より優位となることが報告されています。
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